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2018年7月15日 (日)

正常性バイアス

 西日本の豪雨、未だに被害の全貌もつかめず、被災地の復旧の目途も立たない。被災された方々の疲労も募る一方であろう。この災害に対してルーテル教会も被災者支援の「連帯募金」を開始した。市川教会でも祈りと共に募金に協力したい。
 水害のさ中、父親に避難を促す息子さんが撮った映像がニュースで流された。町で浸水が始まっているから避難しようという息子。「家が浸水することはない、ここは大丈夫だ」と繰り返す父親。仕方なく息子は一人で避難しようとするが、浸水の速さに再び自宅へ。すると玄関にも浸水が始まっている。再度避難を促す息子に対して父親は「一階のテレビを二階に上げるから手伝え」と。苦労してテレビを上げて下に戻ると、既に床上浸水。仕方なく外にでると、水は胸の辺りまできていた。逃げ遅れた人々の多くは、この父親と同じような思いが働いたのではないか。
 「正常性バイアス」という心理学用語がある。予期しない状況に遭遇した時、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、起こっていることを正常な範囲だと自動的に認識する心の働きのことで、ストレスを回避し、心の平安を保てるように防御しようとする脳の作用である。しかし一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、脳の防御作用(正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、生命の危険にさらされる状況を招きかねないこともあるのだ。(HP:Tenki.jpより)先の父親の「ここは大丈夫」という言葉や行動は、まさに「正常性バイアス」の顕著な働きの事例であろう。
 市川教会の会堂修復工事が始まったのは2011年10月であった。その半年前、東日本大震災が起こったが、その揺れで会堂の鐘が鳴る程の激しいものであった。その後も繰り返す余震のたびに、会堂中に軋む音が響いた。私は「会堂は揺れ動くことで安定している」と心に言い聞かせていた。高層ビルは倒壊しないように揺れる構造になっているということが頭にあったからかもしれない。しかし半世紀以上も前に「揺れる構造」として建築された筈もなく、要するに「大丈夫」と自分に思い込ませるしかなかったのだ。修復工事で「非常に危険な状態」であったことを知ってゾッとしたのだが、あれこそまさに正常性バイアスが働いたからに違いない。
 修復後の会堂は、本当に「大丈夫」だから、ご安心ください!

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